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ご近所芸術学ノート①

「ご近所芸術学」がはじまりました。初回はいさざ会館にて拓本の技術をちょこっと勉強しました。身近なあれこれが紙に写し取られることは、写真を撮ることよりも何か刺激的な感じがします。なぜでしょうか。(小さい頃に必ずやった「硬貨を紙に写し取る」という行為はなぜかドキドキしました。あれは拓本の「干拓」という技術だったのですね。)

 拓本は視覚だけでなく「触覚」も使います。紙に写し取るとき直接でこぼこにふれるからです。まちを行くとき、直接肌で道を感じながらは歩きませんよね。しかし拓本という目的を持って道を歩くことが私たちをそんな「日常」から「非日常」へ誘います。道にへばりついてなんでもない道の片隅を真剣にこする「非日常」の世界が繰り広げられているからです。拓本を取る姿ははたからみれば滑稽に見えます。参加者としてはなにかやってはいけないいたずらをやっているようでちょっとした快感も覚えます。

 

 見慣れたものが紙に「痕跡」として残ることは今まで触れたことのなかった表現の領域へ簡単に私たちを導きます。そして人間の「認識」というものはあいまいなものであることを考えさせられます。見慣れたはずのもののでこぼこやざらざらが紙に浮かび上がるだけなのに、新しい発見のように見えて私たちを驚かせてくれるからです。私たちは周囲のものをしっかりと見ているようで何も見ていないのかもしれません。

​日常では感じられなかった美を目の前に見せてくれる技術。それが「美術」なのでしょうか。

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